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イチゴ_高設栽培の灌水管理と肥培管理

イチゴ



はじめに
イチゴの高設栽培は栽培管理をマニュアル化しやすく誰でも高収量が期待できると言われていますが、同じ栽培システムで栽培したとしても、低収量生産者と高収量生産者の収量には相当の較差が見られます。
その原因は栽培管理とともに、灌水や肥培管理によるところが大きいです。今回は東日本で一般的に導入されている100%養液栽培型イチゴ高設栽培にスポットを当て、高収量・高品質を達成するための灌水管理と肥培管理について解説します。

1.灌水管理

1.1 定植前の準備

  • 定植前の培地が乾燥状態である場合、定植後給液しても培地が水をはじくため、活着が悪く、生育ムラを生じます。そのため、培地は定植前にまんべんなく湿らせておくことが重要です。

1.2 定植から活着まで

  • 定植直後の1日でも早い活着が、1番果(頂果房)の花数増加=収量増加につながります。活着を促進するためには根締め灌水が重要です。 根鉢(育苗培地)と培土に隙間が生じないないよう、株元へたっぷりと手灌水して下さい。手灌水の際、発根を促進する資材の活用がポイントです!(詳細は5.1を参照)
  • 完全に活着するまでは葉水も実施して下さい。葉面を乾燥させないことで活着が促されます。

1.3 活着以降

  • まずは少量多灌水が基本です。全ての株元へ均一に灌水できる点滴灌水チューーブが理想的です。
  • 1回当りの灌水量は、灌水の均一性と廃液率を確認しながら調整しましょう。1回当りの灌水量が少なすぎると均一灌水ができず、灌水ムラが生じます。逆に灌水量が多すぎると廃液が大量に発生し、根張りの低下とともに肥料のロスが生じてしまいます。
    ー 灌水の頻度は、廃液の発生状況や培地の水分などを参考に調整します。廃液率を測定できる場合廃液率30%程度が目標となりますが、季節によって蒸散速度が変わりますので、培地が乾きやすい9~11月及び3月以降は廃液率を若干高めに、培地が過湿になりやすい12~2月は廃液率を若干低めに設定して下さい。
    ー 灌水の時間帯は日出の1~2時間後から開始し、日入の3~4時間前に終了することが基本です。
    ー 1株当り1回当りの灌水量は100cc、1日当りの最大灌水回数は3~7回程度が一般的ですが、最終的には生育状況を観察しながら調整することがポイントです。
    ー 培土が乾燥気味の場合は、果実の張り(肥大)の低下・種浮き果・チップバーン(葉先枯れ)・ガク焼けが発生しやすくなります。
    一方、培土が過湿気味の場合は根と微生物が呼吸できずに、上根になってしまい根を深くまで張らせることが出来ません。毛細根の量も著しく低下します。


写真 給液システム

写真 種浮き果

2.pH管理

培地のpHは肥料の吸収に大きく影響し、髙すぎても低すぎても、収量・品質低下の原因となります。

ー pHは給液pHではなく培地のpH(廃液pH)が重要です。培地の適正pHは5.5~6.5です。
pHが6.5より高い場合、リンサン・鉄・マンガンの吸収が低下し、その結果、葉に欠乏症状が発生することがあります。(写真参照)一方、pHが5.5より低い場合、カリウム・カルシウム・マグネシウムの吸収が低下し、果実の肥大の低下やチップバーン・ガク焼けを招くとともに、極端に低pHの場合はマンガンの過剰症状が発生することがあります。
ー 培地のpHを適正に維持するために、給液pHを調整します。培地のpHが高い場合はpHダウン剤(9.8%硝酸液)85%リン酸液などのpHダウン剤で給液pHを下げます。pHダウン剤専用の肥料タンクに投入するか、専用タンクが無い場合は肥料の原液タンクに投入します。尚、原液タンクが1個(1液式)の場合は硝酸液を投入し、原液タンクが硝酸カルシウム用とリン酸入り肥料用の2個(2液式)の場合は硝酸液はどちらの原液タンクにも投入可能ですが、リン酸液はリン酸入り肥料用タンクに投入します。リンサン液を硝酸カルシウム用タンクに投入した場合、結晶物が生じることがありますので、ご注意下さい。
逆に、培地のpHが低い場合は苛性加里(水酸化カリウム)などのpHアップ剤で給液pHを上げます。pHアップ剤は硝酸カルシウム用及びリン酸入り肥料用の原液タンクには投入は出来ませんので、別途タンクを用意する必要があります。


写真 髙pHによる鉄の欠乏症状

写真 低pHによるマンガンの過剰症状

3.EC管理

100%養液栽培型イチゴ高設栽培の肥培管理では、給液の肥料濃度を給液ECの設定により調整する方法が一般的です。
ECとは電気伝導度の略で養液中の主に肥料成分の濃度を表しますが、給液ECと言った場合は、肥料成分としてのECとともに原水としてのECも含まれます。各々のECの関係は以下の通りです。
給液EC = 原水のEC + 肥料成分のEC

3.1 定植から第一次腋果房(2番果)の花芽分化まで

肥料成分のECが高く、チッソの濃度が高すぎる場合、第一次腋果房の花芽分化の遅れを招く可能性があります。
品種や作型により一概には言えませんが、とちおとめ・とちあいか・スカイベリー・やよいひめ・もういっこ・紅ほっぺなどの品種の肥料成分の適正ECは0.4~0.5です。

3.2 第一次腋果房(2番果)の花芽分化以降

肥料成分のECが高く、チッソの濃度が高すぎる場合、乱形果・奇形果・先白果・先青果・着色不良果を招く可能性があります。品種により一概には言えませんが、収量と品質を優先した場合の上述の品種の肥料成分の適正ECは0.6~0.7です。
ただし、食味を優先したい場合は、肥料成分のECを0.8~1.0程度まで上げることにより、糖度及び食味改善効果が期待できます。

3.3 給液ECと培地のECの関係

イチゴが正常に生育している場合の給液ECと培地のECの関係は、 給液EC - 培地のEC = 0 ~ 0.2 です。
培地のECが給液ECより0.3以上低い場合は、必要な肥料成分が不足している可能性があるため、葉色や樹勢を観察しながら、給液ECを上げることを検討します。
逆に、培地のECが給液ECより高い場合は、根張りの低下、培土の乾燥、給液ECの設定が高すぎることが考えられます。例えば、廃液率が30%以上あるにも関わらず、培地のECが給液ECよりも高い場合は、根張りを確認し、根張りが悪い場合は発根促進剤の追肥と葉面散布により根張りを改善して下さい。

4. 肥培管理

市販のイチゴ向けの配合肥料を使っていたとしても、使用している原水、また栽培環境やイチゴの生育状況によっては、一部の肥料成分が過剰になったり欠乏することがあります。最適な肥培管理を行うためには、PsEcoの水質分析と植物分析がポイントです。

4.1 水質分析を活用した肥培管理

PsEcoの水質分析では、イチゴが必要とするチッソ・リンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウムから亜鉛・銅・マンガン・鉄・ホウソ・イオウに至るまで、各種肥料成分が原水にどの程度含まれるか分析し、最適な追肥メニューを提案します。

図1:水質分析結果の事例(グラフのみ)

例えば、図1の水質分析結果の場合、原水に含まれるマグネシウム・イオウが多いため、カリウム不足による果実の肥大低下やカルシウム不足によるチップバーンやガク焼けを引き起こすリスクがあります。 
そこで、PsEcoでは原水中に含まれるマグネシウム・イオウを勘案して、マグネシウム・イオウ成分を減量した追肥メニューを提案します。


表1:処方の例(左側は全ての成分が適正範囲内の場合の追肥メニュー。右側は今回の水質分析結果に基づく追肥メニュー)

PsEcoのイチゴ高設栽培向けの配合肥料のPSアイミックスS4号は原水中にマグネシウム・イオウが一定量含まれていても、肥料バランスを調整しやすくするため、敢えてマグネシウム・イオウの成分を抑えた配合肥料です。
原水のマグネシウムやイオウの水質分析結果が適正の場合は、硫酸マグネシウム硝酸マグネシウムを追加し、マグネシウムやイオウを補充します。(表1の左側)。
一方、今回のようにマグネシウムやイオウが原水に一定量含まれる場合は、硫酸マグネシウムや硝酸マグネシウムは追加しません。(表1の右側)

注:一般的なイチゴ高設栽培向けの配合肥料はマグネシウムやイオウの成分が標準量含まれているため、今回の事例のように原水にマグネシウムやイオウが一定量含まれている場合調整ができません。

このように、水質分析を活用することにより、最適な追肥メニューの作成が可能となります。
しかし、培地中の肥料成分のバランスが適正でも、温度・湿度・日照量・炭酸ガス濃度など栽培環境によってイチゴが必要な肥料成分をバランス良く吸収できるとは限りません。また、生育段階により、イチゴが必要とする肥料の量やバランスは変化します。そこで重要になるのが、PsEcoの植物分析です。

4.2 植物分析を活用した肥培管理

PsEcoの植物分析では、イチゴが必要とするチッソ・リンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウムから亜鉛・銅・マンガン・鉄・ホウソ・イオウに至るまで各種成分が適正に吸収できているか分析し、また、吸収できていなければその原因を解明して最適な追肥メニューを提案します。

例えば、図2の植物分析結果の場合、カリウムと亜鉛・マンガン・鉄・ホウソなど微量要素が不足しています。この結果から、今後、カリウムの吸収不足による果実の肥大低下、微量要素の吸収不足による葉脈間の色抜けやチップバーン・ガク焼け等様々な欠乏症状を引き起こす可能性が考えられます。
そこで、これらの欠乏症状を未然に防ぐために、表2の処方では、カリウム成分を増量するために硝酸カリを、微量要素成分を増量するためにスペシャルME-SCを追加しています。

このように定期的に植物分析と追肥メニューの調整を行うことによって、生育が悪化する前に対策を打つことが可能となります。


表2:処方の事例(左側は植物分析前の追肥メニュー。右側は植物分析結果に基づき修正した追肥メニュー)

4.3 暖候期以降の肥培管理

暖候期は、徒長を抑え、果実や茎葉を強化することが増収・品質維持のポイントとなります。PsEcoでは数年前から植物分析結果に基づき徒長を抑制するための追肥メニューの設計に取り組んでいます。
その中で、チッソの割合を下げ、逆にリンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウム・微量要素の割合を上げることで、徒長を抑制できることが分かってきました。
例えば、表3のように、チッソ・カリウムを含む硝酸カリウムを減量し、リンサン・カリウムを含む第一リン酸カリを新たに追肥することにより、徒長を抑制できることが可能です。

このように、PsEcoでは植物分析を定期的に行うことにより、生育ステージ、生育状況、更には品種に応じて最適な追肥メニューを提案します。

処方例

表3:処方の事例(左側は2月までの追肥メニュー。右側は3月の植物分析結果に基づいて作成した徒長抑制型ニュー)


写真 栃木県の品種スカイベリーの4月上旬の生育状況(反収9t超えの勢い?)

5.イチゴ高設栽培にオススメの資材

イチゴの生育状況に応じた追肥メニューの設計は重要ですがそれだけでは限界があります。発根促進、徒長抑制、果実や茎葉強化、果実の肥大促進、食味改善などの課題を改善するための各種資材をご紹介します。

5.1 発根促進のための追肥と葉面散布

ー 定植直後からの手灌水の際、発根促進+免疫力強化+しおれ防止のための液肥散布が、活着を促進します。
ー 微生物資材は、使用を開始する時期が重要です。微生物が根の張りを助けるためには、出来るだけ早い生育段階で微生物と根の関係を築く必要があります。
ー 厳寒期は外気温や地温、日射量の低下に加えて、着果負担により根張りが低下し始めます。肥料成分の追肥だけでなく、発根を促進するための海藻エキス、酵素、微生物資材の追肥が必要です。

5.2 徒長抑制のための追肥と葉面散布

  • 軟弱徒長しやすい3月以降は特に重要!
  • 徒長を抑制するためには、チッソの割合を下げ、リンサン・カリウムの割合を上げることが重要になりますが、吸収効率が高い亜リン酸資材の追肥・葉面散布が効果的です。
  • 亜リン酸カリと微量要素による、徒長防止と果実の肥大促進(例)PSダッシュMEネオ

5.3 果実や茎葉の強化のための追肥と葉面散布

  • カルシウムやケイ酸は植物の細胞を硬くする働きがあります。
  • ケイ酸資材はうどんこ病対策としても有効です。
  • キレートカルシウムによる、果実と茎葉の強化(例)PSカル
  • ケイ酸カリによる、果実と茎葉の強化と免疫力強化(例)PSセルパワーアップ

*キレートとは、有機酸の力で作物に吸収されやすく、作物体内でも働きやすくした(効きやすくした)肥料のことです。

5.4 果実肥大促進のための追肥と葉面散布

  • カリウム主体の総合肥料(チッソ・リンサン・カリウム・マグネシウム・微量要素)による、果実の肥大促進(例)PSアイミックスS4号
  • カリウム主体の単肥による、果実の肥大促進(例)硝酸カリ第一リン酸カリ
  • 亜リン酸カリと微量要素による、花質改善と果実の肥大促進(例)PSダッシュMEネオ

5.5 光合成促進(食味改善)

  • マグネシウムと微量要素による葉色改善と光合成促進(例)微量要素の宝船
    光合成促進には、葉緑体の構成成分であるマグネシウムや微量要素がポイントです。

  • アミノ酸と糖分による食味改善(例)PSアミノシュガー
    高設栽培の場合、給液ECを上げることにより糖度は上昇しますが、食味の改善にはアミノ酸と糖分の補給がポイントです。

"イチゴの高設栽培の灌水管理と肥培管理のポイント" については以上です。

イチゴ

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