目安:目安:午前23度、午後18~20度
温度調整が可能な時期は、温度管理により、樹勢や栄養成長と生殖成長のバランスを調整することをおススメします。
基本は、樹勢を強めたい場合はハウス内温度を低めに、栄養成長に傾けたい場合は昼夜の温度較差を狭めることです。。
例)昼温:23度→22度、夜温:12度→12度
高温条件下では樹勢が低下し、蒸散量の増加によりしおれが生じやすくなります。
天窓だけでなく側窓の開放も併せた積極的な換気や、循環扇による空気の循環によって、ハウス内温度を低めにを維持するように管理します。
また、ハウス内が高温であったり日射が強い場合は、遮光資材(遮光率30~40%)や遮光剤を活用した遮光がおススメです。ハウス内温度を下げるとともに、果実温度の上昇を抑え、果実の日焼けや着色不良、裂果を防止する効果があります。
厳寒期から暖候期へ移り変わる3月頃は、ハウス内温度が急激に上昇すると、果実表面の温度と気温の差が大きくなり、果実表面に結露が生じて、肥大の低下や灰色かび病などの病気が招くことがあります。そこでお勧めなのが早朝加温、早朝から徐々に温度を上げることにより、果実表面の結露を軽減させます。
例)深夜:10度、日出の2時間前:12度、日出の1時間前:14度、日出時に16℃、その後の換気温度設定も1時間に2度程度徐々に上昇)
写真 換気
光合成促進対策として炭酸ガス発生機の導入が進んでいますが、トマトでは特に果実の肥大促進・品質向上と樹勢維持の効果が認められています。
炭酸ガスの施用
ハウス内の炭酸ガス濃度の目安は外気と同程度の400ppmから500ppm程度で効果を得ることができます。
従来は日の出前後に2時間程度の連続施用を行う「早朝施用」が中心でしたが、この施用方法ではハウス内の炭酸ガス濃度が早朝一時的に1,000ppmを超える一方、日中は外気以下の濃度まで低下するため、最近は午前9時頃から午後3時頃まで1時間毎に施用する、いわゆる「ちょい炊き」が主流になっています。また、最適な炭酸ガス管理のためにセンサーを導入して炭酸ガス発生機と連動させる方式もあります。
暖候期の炭酸ガスの施用
換気の回数が多くなっても意外とハウス内の炭酸ガスの濃度は低下するものです。炭酸ガスの施用は果実肥大の促進に繋がりますので、ハウスのサイドや天窓を全開にするまでは、最低外気と同程度の400ppmを目安に施用を継続することをおススメします。
写真 炭酸ガス発生機(燃焼タイプ)
1段分の収穫を終える毎に1段分の葉かきを行うのが基本。ハウス内の湿度は葉からの水分の蒸散量の影響を受けますので、残す葉の枚数はハウス内の湿度を考慮して調整しましょう。
気温の上昇に伴って茎葉の伸長や葉の展開が早まるため、作業が遅れないように注意して下さい。葉かきには通気性を確保したり、薬剤のかかりムラを軽減させる目的もあります。
強日射による着色不良や日焼けが見られる場合は、果実を覆い隠す程度に葉を残すことも有効です。
写真 葉かき後の状態
ハウス促成栽培では、長期にわたり樹勢、栄養成長と生殖成長のバランスを保つとともに、安定した着果数を維持することが多収の必要条件!そのため状況に応じた摘果作業が重要です。
着果量が多ければ、樹勢低下→小玉果・空洞果
着果量が少なければ、樹勢過多・栄養成長過多→乱形果
大玉トマトの1果房当りの着果数の目安は3~5個ですが、樹勢や品種により調整することがポイントです。
具体的に灌水ポイントを要チェック!
まずは少量多灌水が基本です。土を固めず団粒構造を崩さないで、全ての株元へ均一に灌水できる点滴灌水チューブが理想的です。
土壌が乾燥気味の場合は、樹勢低下、果実の肥大低下を、更に乾燥が続いた場合は、萎れ、チップバーン(葉先枯れ)、ガク焼け、尻腐れ、芯腐れなどの生理障害を招きますが、逆に糖度や食味は上昇します。
一方土壌が過湿の場合は、根と微生物が呼吸できずに、上根になってしまい根を深くまで張らせることが出来ません。毛細根の量も著しく低下します。
天候や土壌水分、生育状況に応じた灌水量とタイミングで適切に調整するためには、テンションメーター(土壌水分計)の活用が効果的です。土壌水分を見える化(数値化:pF値)します。適正なpF値の目安は1.7~2.1(2.3)です。数値が大きいほど乾燥を示し、数値が小さいほど過湿となります。例:pF2.1以上の場合は灌水量を増やし、pF1.7以下の場合は灌水量を減らします。
写真 点滴灌水チューブ
温度が上昇し、日射量が増加する暖候期は、根張りの充実した萎れにくい株を作ることと茎葉や果実の組織を強化することが重要になります。
PsEco植物分析では、トマトが必要とするチッソ・リンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウムから微量要素に至るまで適正に吸収できているか分析し、また、吸収できていなければその原因を解明して最適な追肥・葉面散布のメニューを提案します。
①発根促進のための追肥と葉面散布
団粒構造と保肥力改善に働くことで知られている腐植酸は、実は土壌微生物の活性化にも非常に効果的です!有機物の分解や団粒構造の形成、肥料の分解や作物の養水分吸収の促進、土壌病害の抑制と根の保護、土づくりと作物の生育には微生物が大きく関係しています。肥培管理と併せて、微生物資材および微生物を活性化させる資材の活用が必須です。
②カルシウム・微量要素の欠乏対策のための追肥と葉面散布
カルシウムや微量要素の一種のホウソが不足すると尻腐れ・芯腐れ・葉先枯れ・ガク焼けなどの欠乏症状が発生することは知られていますが、実は病気に対する免疫力・果実の日持ち、更には食味にも影響します。
写真 尻腐れ
③光合成能力の高い葉づくりための追肥と葉面散布
光合成能力の高い葉づくりには、光合成を行う葉緑体の構成成分であるマグネシウムと、葉のまだら症状の予防と改善に働く多種でバランスが取れた微量要素がポイント!
写真 葉のまだら症状
④栄養成長と生殖成長のバランス良い株づくり
生殖成長に傾きがちな暖候期のバランス良い株づくりには、各種肥料成分のバランスとアミノ酸による有効微生物の活性化がポイント!
⑤果実肥大促進と登熟促進のための追肥と葉面散布
果実の肥大にはカリウムの追肥量が大きく影響します。果実の肩の部分の張りを観察しながら、追肥量を調整することがポイント!但し、過剰な追肥はカルシウム欠乏症状の尻腐れ果やマグネシウム欠乏の葉のまだら症状を招くことも。
⑥萎れや裂果・日焼け対策
上記の①発根促進のための追肥と葉面散布と③カルシウム・微量要素の欠乏対策のための追肥と葉面散布とともに、天然の糖で、細胞を防御して蒸散を抑制する働きの高いトレハロースの散布がポイント!
⑦光合成低下対策の追肥と葉面散布
暖候期でも曇雨天続きで日照不足の場合、樹勢を回復させるためにチッソ入り肥料を追肥しても、チッソが同化(アミノ酸の形態を経て植物を構成するタンパク質に転換)するために必要な光合成産物の糖分が不足する結果、未消化チッソが蓄積され葉色が濃くなるだけで、樹勢が回復しないばかりか、組織が軟弱になり病害虫が発生することがあります。こんな時こそ、光合成産物である糖分やタンパク質に転換しやすいアミノ酸の登場です。チッソの同化を促進し、樹勢回復だけでなく果実の肥大や食味が改善されます。
暖候期はハウス内が高温・乾燥になりがち。高温・乾燥条件が続くと、うどんこ病が発生しやすくなります。とにかく!早期予防・早期防除で、多発・まん延させないことが重要です。後手にまわってしまい、多発・まん延してからでは防除は困難です。さらに!薬剤抵抗性にも注意したローテーション散布が必要です。
うどんこ病
<症状や発生要因>
写真 うどんこ病
灰色かび病
<症状や発生要因>
<対策>
疫病
<症状や発生要因>
<対策>
写真 疫病
暖候期は気温の上昇に伴って、害虫の活動も活発になります。
早期発見・早期防除で、多発・まん延させない事が重要です。後手にまわってしまい、多発・まん延してからでは防除は困難です。さらに、薬剤抵抗性にも注意したローテーション散布が重要です。
コナジラミ
<症状や発生要因>
<対策>
アザミウマ
<症状や発生要因>
<対策>
トマト及びミニトマトの防除はマルハナバチや天敵への影響を考慮して行うことが重要です。農薬の使用については、各都道府県(病虫害防除所)の指導をご確認下さい。
上記の使用例では、トマトとミニトマトの両方に登録された農薬を記載しています。
"暖候期の栽培管理のポイントと注意点" については以上です。
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