アスパラガス_「採りっきり栽培」輪作

露地の連作障害対策にアスパラガスを取り入れる！？

連作障害対策として、輪作が効果的です。書籍等で、輪作体系に適した作物の組合せが紹介されていますが、実は「アスパラガス」が輪作に組込めるという事実はほとんど知られていません！

露地の輪作体系の一部に、アスパラガスを組み込む栽培方法、アスパラガス「採りっきり栽培®」をご紹介します。なんと、病気発生リスクが高いと言われる暖地でも、慣行栽培に遜色ない春芽を収穫しています！（採りっきり栽培®は、パイオニアエコサイエンス株式会社の登録商標です。）

• 同じ作物を同じ圃場で長年栽培し続けると、病害虫にとって居心地のよい環境が出来上がり、病害虫被害が年々増えていきます。有用菌は減少していきます。
• さらに、特定の作物が必要養分だけを土壌から吸い上げ続けます。
  →土壌養分も土壌微生物のバランスも次第に崩れて行きます。
  →収穫量や品質は年々低下していく…。これを連作障害といいます。
• 一般的に連作障害は、同圃場で複数種類の作物を順繰り組み合わせて、圃場環境を変える輪作により対策します。
  • 例：前作が「とうもろこし」ならば、次作では「ブロッコリー」を栽培。また「ジャガイモ→小麦→大豆」など複数年に跨った輪作体系など。

1. まずは一般的なアスパラガス栽培について

• 慣行的なアスパラガスの栽培は、定植から20年程続きます。ビニールハウスを用意して、初年度の播種・定植から時間をかけて株と根を育て、翌年春と夏に2度の収穫期を迎えます。
• 収穫期には全ての若茎を刈り取らず、次期収穫のために株と根を残して栽培を続けるという、器用な作業が求められます。
• 暖地では病虫害発生率が高く、作期全体を通して収穫量を安定的に確保し続けるのはプロ農家の業（わざ）です。

写真1 アスパラガス慣行栽培の様子

2. ハウス不要の採りっきり栽培！定植翌年の春に収穫して終わり！低コストで夏場の高温多湿も問題なし！

• 「採りっきり栽培」は慣行ハウス栽培法とは全く異なり、「露地で作期１年半」を想定した栽培方法です。定植翌年の春期（春芽）収穫後に栽培を終了します。

• つまり、病害虫が蔓延しやすい梅雨時期や夏期の収穫を経験しないので、病害虫発生リスクが少ないです。但し、定植初年度の株養成期には夏期を経験しますので、病害虫対策は必要です。

図1 慣行栽培との栽培歴の比較

3.「採りきる」から輪作体系に組み込める！＋「アスパラガス栽培」が寄与する土作り！

• 栽培期間が１年半で終わる「採りっきり栽培」では、春芽収穫を迎えた後に畑が空きます。
• アスパラガスの持つ根酸は、「キタネグサレセンチュウ」数を減少させる効果が知られておりながら、慣行のハウス栽培方法ではアスパラガスを栽培し続けるため、その効果が有効利用されていませんでした。
  →しかし、輪作を前提とした「採りっきり栽培」ならば、その効果を享受することが出来ます。

アスパラガス栽培と相性のよい作物は、「スイートコーン」、「エダマメ」、「ニンジン」、「アブラナ科（ブロッコリーやキャベツ等）」が有望と考えられています。

4. 採りっきり栽培に適した「品種」は？→答えは、専用品種にあり！

実は！すでに、「採りっきり栽培」専用のアスパラガス品種の販売が開始されています。

「太宝早生」、「ギガデル」、「ウインデル」、「ヨクデル」、「クリスマス特急」と、「満味紫」が該当

• 専用品種の特長は、耐寒性に優れ、萌芽が早く、休眠が浅い事です。
• そして上記の専用品種は、太物が収穫出来る品種として好評です。

これらの品種は、全雄品種、紫色品種、極早生から晩生品種まで様々な特性があります。ご自身の（輪作）栽培体系、取引先、市場需要など、生産者の目的にあう品種を選択してください。

おもな採りっきり栽培専用品種

• 太宝早生
  全雄、早生品種：採りっきり栽培および伏せ込み促成栽培専用品種。太さと収量が安定している。

• ギガデル
  雌雄混合、晩生品種：樹勢が強く太い。萌芽が遅いため遅霜のリスクが少ない。採りっきり栽培で極早生の品種との組み合せで収穫期間を長くすることができる。

• ウインデル
  雌雄混合、極早生品種：採りっきり栽培および伏せ込み促成栽培専用品種。樹勢は旺盛、干ばつにも強い。

• ヨクデル
  雌雄混合、早生品種：樹勢が強く、育ちやすい。採りっきり栽培ではやや萌芽が遅い分、収穫初期の霜害のリスクを減らせる。

• クリスマス特急
  全雄、早生品種：採りっきり栽培および伏せ込み促成栽培専用品種。茎数が多く、品質が良い。ポイントは大株づくり。

• 満味紫
  雌雄混合、晩生品種：採りっきり栽培および露地春どり栽培専用品種。鮮やかな濃紫いろ。穂先の締まりが良い。

採りっきり栽培支援担当者からのコメント

• 生育が早くて旺盛、萌芽が早い品種は、低温時から芽が活発に動くため、西日本地域では霜が明ける前から芽が動き出してしまい、収穫前に霜にあたって若茎がやられる初期のロスも報告されています。→これらの地域には、「ギガデル」と「ヨクデル」をオススメします。
• また、近年の高温干ばつや多雨などの異常気象の影響により、夏期の生育停滞、秋期の病虫害発生は年々ひどくなってきています。
  →各種分析に基づく適切な土づくり、葉面散布、適切な潅水などが成功の秘訣です。既存の輪作体型にアスパラガスを組み込む際、収益性を如何に高められるかのカギが土壌分析・植物分析・水質分析に基づく栽培管理です。

5. 栽培ポイントは地温確保にあり！「採りっきり栽培専用定植器」が大活躍

• アスパラガス「採りっきり栽培」では、まだ気温の低い3月に苗の定植を行います。
  ポイント！定植時に苗を冷やさないこと。早めにマルチを張り、地温15℃確保を目標にしてください。

• 一般的に、土壌表面よりも土中の深い場所のほうが地温は高いです。
  アスパラガス「採りっきり栽培」用に特別開発された定植器 は、先端部分が土壌を大きくくり抜く形をしており、この構造によりアスパラガス苗を土深くに定植できます。

• 気温が低い3月の定植では、活着と発根が大きな課題です。そこで大事なひと工夫！

  • 植穴に活着と発根を手助けする微生物を撒く　例：微生物とその棲家
  • 寒さや日照不足に対する抵抗力を高める資材の株元潅水（またはどぶ漬け） 例：アーキア酵素むげん

図2 専用定植器パンフレット

図3 専用定植器

写真2 作業の様子（定植と同時に土壌改良材を撒いている）

6. 実は、アスパラガス「採りっきり栽培」の専用肥培管理がある！

きっと役立つ、アスパラガス採りっきり栽培用の肥培管理を別ページにてご紹介しています。
「採りっきり栽培」アスパラガスを輪作体系に導入したい方、アスパラガス栽培は初めてという方にも、栽培ポイントを分かりやすく説明しています。

アスパラガス_「採りっきり栽培」専用肥培管理

アスパラガス「採りっきり栽培」を実践している農家様からの声（群馬県）
私は、ナスをメインに栽培している農家です。
　過去に、たまたま訪れた他県の農業試験場で露地アスパラの栽培風景を目にし、それ以来ずっと露地でアスパラを栽培したいと思い描いていました。都内のアスパラに関するセミナーで、ついに自分の栽培体型でも取り組める、「採りっきり栽培」に出会いました。
　当時も今も、私の近辺で露地アスパラを本格的にやっている農家はいません。ついに自分で作った念願の露地アスパラを食べた時は感動しました。
　私は約2-3反規模の畑を耕作しています。これまでは、メインの夏季ナス圃場とは別の畑で、秋冬の「ほうれん草」と春の「アスパラ」の輪作を行い、様子を見てきました。「採りっきり栽培」のコツがつかめてきたので、連作障害対策として、メインの夏季露地ナス圃場とこの「ほうれん草→アスパラ」畑のローテーション（輪作）へ挑戦したいと考えています。
　もともとナス用に使っていたハウスがあったので、アスパラ育苗用の施設や資材は一通り揃っていました。「採りっきり栽培」は栽培用の大規模ハウスも不要だし、ナスやほうれん草の収穫（収入）がない3-5月に稼げるのは正直にうれしいですね。でも、一番の幸せは、自分の大好きなアスパラを栽培して食べられることです（笑）。

既存の輪作体系にアスパラガスを取り入れる！多くの露地農家の方にとって新たなビジネス創出機会となることを期待しています。