作終了までの生育の土台となる、"定植時の活着から開花期までの栽培管理ポイントと注意点" を、分かりやすくご紹介します。優良農家の方でも、見落としていることがあるかもしれません。収量を伸ばしたい方必見です。
定植直後の1日も早い活着 が、1番果(頂果房)の花数増加=収量増加につながります。活着を促進する勝負の分かれ目を要チェック!
萎黄病が懸念される圃場では特に注意!:畝が乾燥状態になると、活着が遅れるだけではなく、萎黄病を助長してしまいます。9月下旬頃までは、畝全体を湿らせるような灌水を意識して下さい。効率的に畝や葉を濡らすためには、頭上灌水も効果的です。
写真1 頭上灌水の事例
写真2 定植時の遮光
写真3 遮光と頭上灌水(暑熱対策)
定植直後からの手灌水の際、発根促進+免疫力強化+しおれ防止のための液肥散布が、活着を促進します。定植時に1回目、その1週間後に2回目、合計2回の液肥散布で生育の土台となる根をしっかり張らせましょう。なお微生物資材は、使用を開始する時期が重要です。微生物が根の張りを助けるためには、出来るだけ早い生育段階で微生物と根の関係を築く必要があります。
活着した事を確認したら、開花期までに目指すは徒長していない締まった株づくりです。理想の株は、①健全な葉色、②厚みのある葉、③全ての葉に太陽光線が当たるような葉のサイズと葉柄の長さです。収量を伸ばすために、厳寒期でも樹勢が低下しない株のための準備です。大き過ぎる葉、徒長した過繁茂な草姿は、受光体制と通気性が悪くなり病害虫の温床となってしまいます。その結果、冬場の低温や日照不足、着果負担の影響を受けやすい(不安定な樹勢になりやすい)株に育ってしまいます。根張りが充実した理想的な草姿の株を実現するためのポイントをご紹介します。
写真4 生育初期の徒長していない締まった株
写真5 生育初期の良好な根張り
灌水は、不足してもやり過ぎても生育を阻害します。適切な灌水ポイントを要チェック。
写真6 チップバーン(葉先枯れ)
写真7 テンションメーター(土壌水分計)
徒長していない締まった株づくりを目指し、活着後から灌水チューブを使った追肥と葉面散布を本格的に開始します。但し、チッソの追肥には要注意です。この時期は基肥が効いていますので、基本的には2番果(第1次腋果房)の花芽分化以降からチッソの追肥を開始します。早めのチッソ追肥は2番果の花芽分化をオ遅らせてしまい、さらに過繁茂→病害虫のリスクを高めます。2番果の花芽分化の時期をむかえたら、植物分析を行いチッソ追肥のタイミングを調整しましょう。活着後から開花期までの肥培管理に必要なのは、①発根促進、②茎葉強化(徒長防止)、③葉色改善(繰り返しになりますが、チッソの追肥は行いません)のための資材です。
①発根促進のための追肥と葉面散布
団粒構造と保肥力改善に働く事で知られている腐植酸は、実は土壌微生物の活性化にも非常に効果的です!有機物の分解や団粒構造の形成、肥料の分解や作物の養水分吸収の促進、土壌病害の抑制と根の保護、土づくりと作物の生育には微生物が大きく関係しています。肥培管理と併せて、微生物資材および微生物を活性化させる資材の活用が必須です。
②茎葉強化(徒長防止)のための追肥と葉面散布
丈夫で免疫力が高い健全な株づくりが、病害虫を寄せ付けないための第一歩です。
なおキレートとは、有機酸の力で作物に吸収されやすく、作物体内でも働きやすくした肥料のことです。
③葉色改善
働く葉色づくりには、光合成を行う葉緑体の構成成分であるマグネシウムと、葉のマダラ症状の予防と改善に働く多種でバランスが取れた微量要素がポイント!
マルチに穴を空けてイチゴの株に被せて張る場合は、株と花芽を傷つけないよう、株が小さいうちに作業しがちです。早期にマルチ張りを行うと、株を物理的に傷つける事は回避できても、地温を上昇させてしまう事で根張りの低下を招きます。また、地温の上昇は肥料の分解/吸収を促進し、生育が旺盛になってしまう事もあります。そうなると、2番果(第1次腋果房)の花芽分化を遅らせてしまいます。さらに、地温が上昇すると根傷み→萎黄病・炭疽病・疫病の罹病リスクが高まります。根張りが充実した徒長していない締まった株へ育てるために、遅い時期でも株と花芽を傷つけずに作業できる合わせマルチをPsEcoはお奨めします。
写真8 葉・花芽・根を傷めにくい合わせマルチ1(肩口までたくし上げた様子)
写真9 葉・花芽・根を傷めにくい合わせマルチ2(ホチキスとめ)
とにかく!早期予防・早期防除で、多発・まん延させない事が重要です。後手にまわってしまい、多発・まん延してからでは防除は困難です。さらに!薬剤抵抗性にも注意したローテーション散布が必要です。また!葉かぎ作業が出来ていないとせっかく農薬散布を行っても葉の表・裏両面に確実にかかりません(散布ムラ)。治療よりも予防が、まん延を防止する対策です。
土壌伝染性の炭疽病や萎黄病は、「無病苗の定植」と「土壌消毒による本圃での発生を防ぐこと」が理想的ですが、実際には全国の産地で問題になっています。
本記事では、定植後の対応策についてご紹介します。
炭疽病
<症状や発生要因>
<対策>
例)ファンベル顆粒水和剤(RACコードF:11・ M7)→サンリット水和剤(RACコードF:3)→シグナムWDG(RACコードF:11・7)
写真10 炭疽病
萎黄病
<症状や発生要因>
<対策>
発病株や感染が疑わる株は速やかに撤去し、ビニール袋等で密閉して処分する
補植する際に、苗の免疫力を強化するために微生物資材を灌注する
微生物資材 例:PSコレイーネ、PSバイオギフトLIQ
無病苗を補植しても定植の際に根が傷つき罹病する可能性が高いため、隣の株のランナーを補植する方法がより確実
写真11 萎黄病
うどんこ病の本格的発病時期は、病原菌が活発になる気温が低下した頃(目安:11月以降)ですが、定植後から開花期までの殺菌剤の「ローテーション散布(以下のRACコードの活用)」による予防がうどんこ病対策のポイントです。
うどんこ病
<症状や発生要因>
<対策>
RACコードを活用したローテーション散布による予防
・ 炭疽病が懸念される時期は、炭疽病にも有効な殺菌剤の散布を!
・ 灰色かび病が懸念される時期は、灰色かび病にも有効な殺菌剤の散布を!
灰色かび病にも有効な殺菌剤の例)アフェットフロアブル(RACコードF:7)→フルピカフロアブル(RACコードF:9)→アミスター20フロアブル(RACコードF:11)
薬液は葉の表・裏両面に確実に散布→そのためには散布前の葉かきが重要
白いかびが発生源となるため、被害部位は速やかにビニール袋等で密閉して処分する
乾燥でも発生するため適正な湿度の保持(適正な土壌水分を維持)
チッソ過剰や軟弱徒長により発生しやすくなるため、追肥や葉面散布による免疫力強化と茎葉強化が鍵!(詳細は2.2 肥培管理)
害虫防除の基本は早期発見・早期防除ですが、ダニが多発する地域・時期には予防散布がポイントです。
ハダニ
<症状や発生要因>
<対策>
スリップス
<症状や発生要因>
<対策>
ハスモンヨトウ幼虫
<症状や発生要因>
<対策>
写真12 ハスモンヨトウの被害
イチゴの防除は、ミツバチや天敵への影響を考慮して行うことが重要です。農薬の使用については、各都道府県(病虫害防除所)の指導をご確認下さい。
"定植時の活着から開花期までの栽培管理ポイントと注意点" については以上です。
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