夏秋トマト(雨除けトマト)の場合、温度・湿度・日射量・炭酸ガスなど環境の制御には限界があるため、樹勢低下・花落ち・裂果・艶無し果などの課題に対して、追肥や葉面散布による対応が重要になります。本記事では夏秋トマトの収穫開始から収穫終了までの肥培管理のポイントを高温障害や生理障害の対策なども交えながら、分かりやすくご紹介します。
日射量の増加に伴い水分の要求量が急増するこの時期は、土壌の乾燥により、萎れ・チップバーン(葉先枯れ)・尻腐れ・芯腐れが発生したり、逆に豪雨などにより土壌水分が急激に上昇した場合、裂果が発生するケースがあります。
具体的に灌水ポイントを要チェック。
まずは少量多灌水が基本です。土を固めず団粒構造を崩さないで、全ての株元へ均一に灌水できる点滴灌水チューブが理想的です。
土壌が乾燥気味の場合→樹勢低下と果実の肥大低下、更に乾燥の場合→萎れ、チップバーン(葉先枯れ)、ガク焼け、尻腐れ、芯腐れなどの生理障害を招きますが、逆に糖度や食味は上昇します。
一方土壌が過湿気味の場合は、栄養成長に傾くとともに樹勢が強くなり、乱形果や異常茎を招きます。また、根と微生物が呼吸できずに、上根になってしまい根を深くまで張らせる事が出来ません。毛細根の量も著しく低下します。
天候や土壌水分、生育状況に応じた灌水量とタイミングで適切に調整するためには、テンションメーター(土壌水分計)の活用が効果的です。土壌水分を見える化(数値化:pF値)します。標準的な糖度のトマトのpF値の目安は1.7~2.1です。数値が大きいほど乾燥を示し、数値が小さいほど過湿となります。例:pF2.1以上の場合は灌水量を増やし、pF1.7以下の場合は灌水量を減らします。
写真 点滴灌水チューブ
夏期は、高温によるストレスや根張りの低下により、肥料の吸収が全体的に低下するだけでなく、バランスが崩れやすい時期です。→PsEco植物分析では、トマトが必要とするチッソ・リンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウムから微量要素に至るまで適正に吸収できているか分析し、また、吸収できていなければその原因を解明して最適な追肥・葉面散布のメニューを提案します。
灌水と同様「少量多施肥」が重要。できるだけ灌水の度に薄めの液肥を追肥して下さい。肥料の吸収効率が良くなるだけでなく、糖度や食味が安定します。
摘芯後は茎葉の成長が低下し、果実の成長が主体になるため、肥料の要求量が低下するだけでなく、要求される肥料成分のバランスが大幅に変わります。摘芯後の肥培管理で重要なポイントをチェック!
①追肥メニューの変更
摘芯後は、チッソの組成(割合)を下げ、チッソ以外のリンサン・カリウム・カルシウム・マグネシウム・微量要素の組成を維持することがポイントになりますが、PsEco植物分析では、分析結果に基づき具体的な追肥・葉面散布のメニューを提案します。
②追肥量の調整
収穫段数が進むにつれて徐々に追肥量を減らしていきます。
(例)1週間・1反当りの追肥のカリウム成分
未収穫の段数6段(摘心時):2.4kg
未収穫の段数4段 :1.6kg
未収穫の段数2段 :0.8kg
ただし、収穫期間中、果実の肥大の低下が見られた場合は追肥量を増量
収穫開始以降の肥培管理では、①発根促進、②栄養成長抑制、③カルシウム・微量要素の欠乏対策、④光合成能力の高い葉づくり、⑤樹勢維持、⑥果実肥大促進に加えて、強日射・高温による⑦萎れや裂果・日焼け対策、逆に秋雨期の日照不足による⑧光合成不足対策が重要になります。
①発根促進のための追肥と葉面散布
団粒構造と保肥力改善に働くことで知られている腐植酸は、実は土壌微生物の活性化にも非常に効果的です!有機物の分解や団粒構造の形成、肥料の分解や作物の養水分吸収の促進、土壌病害の抑制と根の保護、土づくりと作物の生育には微生物が大きく関係しています。肥培管理と併せて、微生物資材および微生物を活性化させる資材の活用が必須です。
②栄養成長抑制のための葉面散布
吸収効率の高い「亜リン酸」とリン酸の代謝を促進してくれる「酵素」の相乗効果で生殖成長型の草姿を目指しましょう。
③カルシウム・微量要素の欠乏対策のための葉面散布
根張りの促進と栄養成長抑制のため2段開花までは土壌を乾燥気味に管理するため、カルシウムやホウソが吸収しづらくなり、尻腐れ・芯腐れ・葉先枯れ・ガク焼けなどの欠乏症状が発生しやすい!
写真 尻腐れ
④光合成能力の高い葉づくりための追肥と葉面散布
写真 葉のまだら症状
⑤樹勢維持のための追肥
健全な株づくりには、アミノ酸・微量要素による有効微生物の活性化がポイント!
⑥果実肥大促進と登熟促進のための追肥と葉面散布
⑦萎れや裂果・日焼け対策のための葉面散布
発根促進やカルシウム・微量要素の欠乏対策のための追肥と葉面散布とともに、天然の糖で、細胞を防御して蒸散を抑制する働きの高いトレハロースの散布がポイント!
⑧光合成低下対策のための追肥と葉面散布
曇雨天続きで日照不足の場合、樹勢を回復させるためにチッソ入り肥料を追肥しても、チッソが同化(アミノ酸の形態を経て植物を構成するタンパク質に転換)するために必要な光合成産物の糖分が不足する結果、未消化チッソが蓄積され葉色が濃くなるだけで、樹勢が回復しないばかりか、組織が軟弱になり病害虫が発生することがあります。こんな時こそ、光合成産物である糖分やタンパク質に転換しやすいアミノ酸の登場です。チッソの同化を促進し、樹勢回復だけでなく果実の肥大や食味が改善されます。
高温や高地温は、根張り低下や樹勢の低下を招き、最終的には落花、障害果(尻腐れ果・裂果・空洞果など)の発生、食味の低下に繋がります。高温対策のポイントをチェック!
ハウス内の気温や地温を下げることが、高温障害の最も重要な対策となります。
写真 遮光資材と循環扇
高温や高地温とともに、大雨などによる土壌の過湿も根張りの低下の原因となります。
発根促進対策については、前述(3.①発根促進のための追肥と葉面散布)の通りですが、土壌が過湿な場合は酸素不足が根張りを更に悪化させますので、酸素の供給が根張り促進のカギとなります。
-高温・過湿により酸素不足の土壌へ酸素の供給 (例)M.O.X、M.O.X ゴールド
樹勢を回復させるためには、①摘果、②芽かき、③適切な肥培管理がポイント!
①摘果:着果量が多ければ、樹勢の低下→小玉果・空洞果に繋がります。大玉トマトの1果房当りの着果数の目安は品種・着果段数・植付け本数・仕立て本数などにより異なりますが(通常は3~5個)、樹勢により調整することが重要です。
②芽かき:脇芽かきの遅れは、樹勢の低下を招くだけでなく落花→着果数の低下にも繋がります。特に花房下の脇芽は生育が旺盛なため、早めにかくようにしましょう。
③適切な肥培管理:前述(3.⑤樹勢維持のための追肥)の通り、樹勢維持にはチッソ・リンサン・カリウム・マグネシウムを含む液肥の活用と同時に、アミノ酸・微量要素による有効微生物の活性化がポイントになります。
写真 摘果後の様子
高温下でも着果させるためには、①花質を改善するための葉面散布や②適切な受粉がポイント!
①花質を改善するための葉面散布
②適切な受粉
マルハナバチを使用する場合
ホルモン(例)トマトトーンを使用する場合
ポイント! トマトトーンにジベレリン液剤を5~10ppm程度添加することで、空洞果の予防に繋がります。
写真 巣箱に遮光する様子
<症状>
<発生要因>
<対策>
①樹勢を低下させるために、1本仕立て栽培から2本仕立て栽培へ変更
②土壌の排水性の改善!高畝や土壌の排水性を改善する資材(例)フミリカ、PSアクティベーターの散布
③栄養成長を抑制して生殖成長を促進のための葉面散布
④カルシウムを補給するために吸収効率の良いキレートカルシウム資材(例))PSカルの葉面散布
⑤ホウソを補給するための微量要素資材(例)スペシャルME-SC、微量要素の宝船の追肥または葉面散布
ポイント!異常茎が発生した時の対処方法:
異常茎が発生すると、最悪の場合芯止まりを起こす場合があります。異常茎が発生した直下の側枝を残して、最終的に主枝と側枝で生育が良い方を残すようにしましょう。
写真 異常茎(ねがね)
<症状>
<発生要因>
<対策>
①換気や遮光などによる高温対策
②ホルモン処理を適期に適切な濃度で実施
③マルハナバチの導入により適正な受粉
④花質改善のための葉面散布
写真 艶なし果(左)通常の果実(右)の様子
<症状>
写真 尻腐れ果
<発生要因>
尻腐れ果・芯腐れ果は、基本的にカルシウムやホウソの不足により発生します。土壌中にカルシウムが不足している場合よりも、以下のような要因で根からの吸収が低下したり、植物体内を移行できないために発生することが多い!
ポイント!一般的に、尻腐れ果はカルシウム欠乏症、芯腐れ果はホウソ欠乏症と言われていますが、PsEcoの長年の分析結果により、尻腐れ果・芯腐れ果どちらもカルシウムとホウソの不足が関係していることが分かってきました。
<対策>
①土壌水分を適正に維持するため、天候や生育状況に応じて灌水量と灌水頻度を調整
ポイント!土壌水分が適正か判断するには、テンションメーター(土壌水分計)の活用がお勧めです。使い方はカンタンで、根域の土壌水分が一目瞭然。
② 換気や遮光などによる高温対策
③ 適正な樹勢を維持するとともに適切な葉かき
④ カルシウムを補給するために吸収効率の良いキレートカルシウム資材(例)PSカルの葉面散布、ホウソを補給するための微量要素資材(例)スペシャルME-SC、微量要素の宝船の追肥または葉面散布
⑤ 発根促進資材(例)PSマリンパワー、アーキア酵素むげんの追肥または葉面散布により根張りの強化
⑥ 土壌中でリンサン固定されたカルシウムを有効化(キレート化)するために、有機酸資材(例)PSリンクの継続的な追肥
<症状>
果実が放射線状に割れる
果実が同心円状に割れる
写真 果実が放射線状に割れる裂果
<発生要因>
裂果は、急激な土壌水分や養分の吸収により果実が急激に肥大することにより発生しやすい。
<対策>
① 土壌水分を適正に維持するため、天候や生育状況に応じて灌水量と灌水頻度を調整
② 通路灌水や遮光による湿度維持や気温低下(果実温度の低下)
③ 樹勢が低下しがちな生育の中盤以降まで樹勢を保つことで、適度な大きさの葉を維持し、果実に直射日光を当てない
④生育初期の段階から根張りが良く締まった株を作ることが重要
発根促進資材(例)PSマリンパワー、アーキア酵素むげん、PSバイオギフトLIQ、PSコレイーネや栄養成長抑制のための亜リン酸カリ(例)PSダッシュMEネオの追肥または葉面散布
⑤保湿効果の高いトレハロース資材(例)アルバトロスを葉面散布することにより蒸散を抑制
とにかく!早期予防・早期防除で、多発・まん延させないことが重要です。後手にまわってしまい、多発・まん延してからでは防除は困難です。さらに!薬剤抵抗性にも注意したローテーション散布が必要です。
灰色かび病
<症状や発生要因>
<対策>
ポイント
本格的な保温を開始(天井だけでなくサイドも完全に被覆)以降は、ハウス内が過湿になり、果実に白い病斑(ゴーストスポット)が発生しやすくなりますので、下葉かきにより、通気性の改善と葉からの水分の蒸散を抑えることが重要になります。
一般的に、本格的な保温開始以降はハウス内が過湿になると言う理由で農薬散布を控えますが、免疫力向上のため、反当り50L程度の少量の水量での微生物資材(例)PSコレイーネ、PSバイオギフトLIQ の葉面散布がオススメです。
写真 灰色かび病
葉かび病
<症状や発生要因>
<対策>
写真 葉かび病
うどんこ病
<症状や発生要因>
<対策>
写真 うどんこ病
かいよう病
<症状や発生要因>
<対策>
写真 かいよう病
コナジラミ
<症状や発生要因>
<対策>
アザミウマ
<症状や発生要因>
<対策>
ハスモンヨトウ
<症状や発生要因>
<対策>
1.齢期が進むと農薬の効果が低下するため、 若齢期にうちに防除することが重要
2. RACコードを活用したローテーション散布による防除
例)アタブロン乳剤(RACコードⅠ:15)→フェニックス顆粒水和剤(RACコードⅠ:28)→ディアナSC(RACコードⅠ:5)
3. ハウスでは、天窓やサイドなどの換気部に防虫ネットを張って、外からの侵入を防止する
4. 黄色灯(防蛾灯)も効果あり
5. ハウス周辺の雑草に寄生するため除草する(意外と怠りがち)
オオタバコガ
<症状や発生要因>
<対策>
1.果実に侵入する前の 若齢期にうちに防除することが重要
2. RACコードを活用したローテーション散布による防除
例)アタブロン乳剤(RACコードⅠ:15)→フェニックス顆粒水和剤(RACコードⅠ:28)→スピノエース顆粒水和剤(RACコードⅠ:5)→アニキ乳剤(RACコードⅠ:6)
3. ハウスでは、天窓やサイドなどの換気部に防虫ネットを張って、外からの侵入を防止する
4. 黄色灯(防蛾灯)も効果あり
5. ハウス周辺の雑草に寄生するため除草する(意外と怠りがち)
トマト及びミニトマトの防除はマルハナバチや天敵への影響を考慮して行うことが重要です。農薬の使用については、各都道府県(病虫害防除所)の指導をご確認下さい。
上記の使用例では、トマトとミニトマトの両方に登録された農薬を記載しています。
"夏秋トマト(雨除けトマト)栽培管理ポイント収穫開始から収穫終了まで" については以上です。
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